文房具としておなじみの消しゴム。
絵を描く時にはどのように使うかご存知ですか?
消しゴムは“描く”道具
消しゴムは絵を描く時には消し具と呼ばれます。
文字を書く時のように引いた線や塗った部分を
“消す”と言うよりも“描く”という意識で使います。
例えば、光そのものや、水面や金属などの物質に
光が当たって反射している状態を描くなら、
一番光強く感じられるところ(ハイライト)は塗り残すか
消しゴムなど塗った部分を消して白い光を表現します。
デッサンや色鉛筆画、水彩画では
あえて色は塗らずに紙本来の色で白を表現するんですよ。
色鉛筆の場合は、ある程度は消しゴムで消すことは出来ますが
性質上、鉛筆ほどは消すことができないので注意が必要です。
消しゴムは消す以外にもぼかしを表現をしたり、
絵の調子を整えたりする際にも重宝します。
使い方次第で表現の幅が広がるのも面白いところです。
では次に、プロがどのような種類の消しゴムを使っているのか
見ていきましょう。
消しゴムの種類
絵を描く際に使う消しゴムにはどのようなものがあるのでしょうか。
それぞれの特徴や使い方を見て行きましょう。
1.プラスチック消しゴム
塩化ビニール樹脂が主成分の一般的に使われている消しゴムの定番。
製図用のものが多く使われています。
消す力が強く、鉛筆の芯に含まれる黒鉛を包むこむようにして
消しクズになって取れるので、
新しい表面で違う所を消すことができる。
【使い方】
鉛筆の黒鉛や色鉛筆の顔料が付いた面は、
紙を汚してしまう場合があるので
綺麗にした状態で使いましょう。
角が丸くなって使いにくい時や、細い線を表現したいときは
カッターで切り落とすと角が再生できて
シャープな表現が可能になります。
注意!
同じ個所を何度も擦ると紙を傷めてしまうので
多用は控えましょう。
【使う際のメリットとデメリット】
・メリット
消す力が強く、広い面積や主線もしっかりと消すことができる。
・デメリット
何度も同じ個所を消したり、強く擦ると紙を傷めてしまう。
消しクズが出る。
2.スティックタイプ
細かいところを消すために作られた
スティックタイプのプラスチック消しゴムです。
ピンポイントで消すことが出来るので、
細かい部分の修正や細密画を描く人にとっては
重宝するアイテムです。
軟らかいタイプと硬いタイプがあって、
広い面を消したい場合は軟らかいものを、
細かい部分を消すときは硬いタイプを選びます。
丸型や角型など形にも種類があって、
用途によって使いわけます。
【使い方】
ペンのようにノックしたり、くり出して使います。
鉛筆の黒鉛や色鉛筆の顔料が付いた状態は、
紙を汚してしまう場合があるので
綺麗にした状態で使いましょう。
角が丸くなってきたなと感じたら
カッターで切り落とすとよりシャープな角ができて
繊細な表現が可能になります。
注意!
ピンポイントで消せる分、
紙を傷めてしまう可能性があるので多用は控えましょう。
【使う際のメリットとデメリット】
・メリット
消す力が強く、広い面積や主線もしっかりと消すことができる。
・デメリット
何度も同じ個所を消したり、強く擦ると紙を傷めてしまう。
消しクズが出る。
3.練りゴム
練り消しとも呼ぶデッサン用の消しゴムです。
粘土のように形を自由に変えられてカスがあまり出ないのが特徴で
プラスチック消しゴムよりも消す力は弱めです。
【使い方】
細く尖らせて細かい部分を消したり、
潰した状態で紙を押さえたり
棒状にして紙の上を転がして
描いた部分の調子を落とすことができます。
画面を汚す原因になるので全体的に黒ずんだ状態になったら
新しいものに取り換えるタイミングです。
注意!
練りゴムには油分があるので、
力を入れすぎると油分が紙に残ってしまい
シミやムラができた状態になる場合があります。
手に持った状態が長時間続くと、手の皮脂や汗を含んで
粘り気が強くなり、こちらもシミやムラの原因になります。
【使う際のメリットとデメリット】
・メリット
紙との摩擦が起きにくいので、
紙を傷めにくい。消しクズが出にくい。
濃淡、ハイライト、ぼかしなどの細かい表現ができる。
・デメリット
しっかり強い線で描きこんだものを消し取るのは不向き。
4.電動消しゴム
電気の力で消しゴムを高速で回転させて消すので、
手を使って消すよりも
小さな範囲をピンポイントでしっかり消すことができます。
充電式や電池を使うコードレスタイプと
電源に繋いで使うコードタイプがあって
消しゴムは小さくなったら取り換えて使います。
消しゴムを細く尖らせればより細かく細く消すことができますし、
タイプを変えればペンやインクも消すことができます。
【使い方】
電源を入れ、スイッチがONの状態で消したい場所に
消しゴムを押し当てると消すことができます。
スイッチ式はスイッチをONにして動いた状態で、
ボタン式は手元でスイッチON/OFFを切り替えて使います。
紙に押し当てる力を変えたり、消しゴムの太さを変えると表現の幅が広がります。
注意!
ケガの原因になる場合があるので、使う際は消しゴムを
ホルダーに取り付けてから使用してください。
(取扱い説明書に沿った使い方をしましょう)
【使う際のメリットとデメリット】
・メリット
広範囲でも小さな面積も力を使わなくても
しっかり消すことができる。
・デメリット
文房具としてはコストが高め。
消しクズが出る。
5.色鉛筆用の消しゴム
そのまま色鉛筆用の消しゴムですね。
まず、色鉛筆と鉛筆は芯の作り方が全く異なります。
鉛筆は芯を焼いて作られているので硬く、
紙に書くと成分の黒鉛の粉が表面に乗った状態になります。
一般の消しゴムはその表面の黒鉛を絡めとって
“消す”ことができます。
一方の色鉛筆は、顔料に蝋、糊剤を混ぜたものを
そのまま固めて芯が作られています。
そのため鉛筆に比べると軟らかく、
芯で紙の表面を描いたり塗ったりすると、
成分が紙の繊維に染み込んでいきます。
繊維の奥まで浸透した成分は
表面を擦るだけでは綺麗に“消す”ことが難しくなるのです。
そうした色鉛筆の特長を考えて作られたのが、
色鉛筆用の消しゴムです。
一般のプラスチック消しゴムよりも柔らかく、
色鉛筆の成分が繊維の中に染み込んだ部分に
届きやすくなっています。
また、細長く作られていることで細かなところも消しやすく、
描いた線を傷めないので
色調の調整などを行うのに重宝します。
【使い方】
いきなりゴシゴシ消すのではなく、
表面を擦るように様子を見ながら使いましょう。
注意!
色鉛筆用と言っても、強く線を描きこんだり、
長時間経過したものを
完全に消すのは難しくなります。
また、薄く描いたものであったり、
ある程度であれば一般の消しゴムでも消せるので
目的に合ったものを選ぶようにしてください。
【使う際のメリットとデメリット】
・メリット
色鉛筆で描いた描線を傷つけずに色調の微調整ができる。
一般の消しゴムより細長く作られているので
細かい部分も消しやすい。
・デメリット
一般的な消しゴムよりコストが高め。
専用といっても色鉛筆で描いたものを
全て消せるわけではない。
専用のラバーで消せる色鉛筆もあるようです。
線が消せないと不安という方はためしてみてもいいかもしれません。
番外編
消しゴムではありませんが、消し具として
使われるものがあります。
食パン
パンは消しゴムができる以前から消し具として使われていて、
現在も主に木炭デッサンで使われています。
【消し具としての食パンの使い方】
食パンの中の柔らかい部分を小さくちぎって
使います。
粘り気が少ないので、練りゴムより
紙を傷めにくく、大きく調子を作ったり、
整えたりすることができます。
今回は画材としての消しゴムを
ご紹介しました。
他の画材と組み合わせて自分にあったものを
見つけてくださいね。